■最近耳にする“筋膜リリース”
よく耳にする筋膜リリースとは、いくつもの種類がある筋膜の一部(主に表層)をリリースすることがほとんどです。表層の筋肉のコリなどには有効であっても、深部の癒着や関節の可動域制限にはほとんど効果がないと言われています。また、筋膜リリースの結果として筋肉が本当に滑るようになったことを裏付けるエビデンスはほとんどありません。また、ボールで圧迫するだけ、あるいは筋肉をストレッチするものも「リリース」という名称が用いられ、元来の「筋膜リリース」とは全く異なるものも多数紹介されています。
■組織間リリースとは?
組織間リリース(Inter-Structural Release:ISR)とは、広島国際大学教授の蒲田和芳氏が長年に渡り徒手療法の技術開発に取り組んだ結果たどり着いた技術で、組織どうしをゆるく結合している疎性結合組織と言われる部分をリリース(解放)することを指します。上記の筋膜リリースは筋膜の一部のみをリリースするのに対し、組織間リリースは、全ての軟部組織(=筋・腱・筋膜・神経)を対象に、指先を組織の間に滑り込ませ、組織間の結合をリリースするものです。すべての組織が子供のときのようにスムーズに滑るようになることで、組織の緊張を軽減したり、癒着による痛みを取り除いたりできるようになります。
例えば、スポーツ選手に起こる肉離れでは、その回復過程で必ず筋肉の癒着が起こります。それを解消せずにトレーニングを行っても痛みや違和感、柔軟性低下を解消することはできず、再発しやすい状態のまま復帰していくことになります。このような場合でもISRを用いることで深層の筋肉間の癒着を解消することができます。